広報ちがさき 2018年(平成30年)10月1日号 RESCUEレスキュー 人命救助の精鋭部隊 救助隊 市民の安全を守る消防隊。その中でも、人命救助の専門部隊であるのが救助隊だ。市消防本部の救助隊は、救助技術の高さを競う消防技術大会で県大会、関東大会を勝ち抜き全国大会への出場が決定。しかし、8月24日に京都で開催予定だった全国大会は、台風の影響で中止となった。 今夏、大会に向け訓練に励んだ人命救助のスペシャリスト・救助隊に密着し、救助への思いを聞いた。 【警防救命課警防担当】 憧れのオレンジの活動服    市消防本部には消防隊、救急隊、救助隊、水難救助隊、指揮隊があり、救助隊は人命救助を専門とする16人の隊員で構成されている。隊は8人ずつ2隊で365日交代勤務。救助現場には5人1組で、大規模災害や交通事故現場などさまざまな災害現場で尊い命を助けるために出動する。小室俊一隊長は「我々はいつでも市民から頼られる存在でなければならない」と話す。救助隊が着ているオレンジの活動服に憧れる隊員も多い。救助隊に配属されて2年目になる松原拓海隊員は「救助隊が着るオレンジの活動服は憧れだった」と笑顔で答えた。 厳しい訓練で培う 阿吽の呼吸  記録的猛暑だった今夏、救助隊の姿は矢畑の訓練場にあった。消防技術大会の全国大会に向け、訓練に取り組んでいた。  今回、出場が決定していた障害突破という種目は、5人1組で「乗り越える」、「登る」、「渡る」、「降りる」、「濃煙を通過する」の五つの障害を突破する種目だ。岡林良太隊長は「競技として臨むことで限界まで追い込むことができ、これは実際の災害現場でも生かされる。厳しい中でこそ生まれた阿吽の呼吸が連携を深める」と訓練の意義を話す。松原隊員は「吐き気がするほど苦しいこともあるが、この厳しい訓練を積むことで自信になる」と話す。 時間と恐怖心との戦い  過酷な救助現場では、隊員たちは救助までの時間と恐怖心との戦いを迫られる。救助隊5年目の吉田健輔隊員は、かつて車同士で正面衝突した交通事故の現場に出動。車には座席とハンドルの間に若い男性が挟まっていた。吉田隊員は男性の意識を保つため声を掛け続け、男性は元気に受け答えをしていた。しかし、救助までの間に男性の容態が急変した。「少しの遅れが人の生死に関わる。スピードが命の世界だと痛感した」と吉田隊員。松原隊員は現場での恐怖心を「隊長がしっかり現場をコントロールしているので、迷わずに行動できる。しかし、火災現場はやはり怖いこともある。でも、苦しんでいる人を早く助けに行かなくてはという使命感で訓練や火災の検証を積み重ねている」という。  日本各地で大災害が相次いでいる。岡林隊長は「救助隊は日々しっかりとした訓練を積んでいる。ぜひ訓練の様子を見に来て、茅ヶ崎の救助隊を知ってほしい。そして万が一、災害現場に遭遇したとき、オレンジの服の我々を見たら安心してほしい」と力強く語った。 高所での活動は転落事故などのリスクがあり危険な活動だ 狭い煙道を素早く駆け抜ける ロープによる降下。体に巻きつく事故もあるため細心の注意を払う 隊によって活動服の色が異なる グレー 救急隊、救急救命士が着用 紺色 消防隊、水難救助隊、指揮隊が着用 オレンジ 救助隊が着用 救助工作車の中は約100の資機材が積載されている。隊員はこれらを用いて迅速・確実に人命を救助する